入稿データ作成の基礎知識|ノンブル・トンボ・塗り足し・解像度をわかりやすく解説

「印刷所にZINEの印刷をお願いしてみたいけれど、『塗り足し』や『トンボ』『解像度』といった専門用語が多すぎて、データが正しく作れているか不安……」

「入稿した後に『データ不備』で再提出になったり、印刷がズレて紙の白いフチが出てしまったらどうしよう……」

ZINEやリトルプレスを初めて印刷所に発注しようとするとき、誰もが最初にぶつかる大きな壁が 「入稿データの作成ルール」 です。

普段、自宅のプリンターやコンビニのコピー機で印刷しているときには意識しない「塗り足し」や「トンボ」「ノンブル」「解像度」「カラーモード」といった専門用語が次々と登場し、難しそうに感じてしまうかもしれません。しかし、印刷所のデータ入稿ルールは、決して初心者を困らせるための意地悪な試験ではありません。すべては 「印刷機や断裁機という物理的な機械を使って、あなたの本をイメージ通りに美しく仕上げるため」 の極めて合理的で親切な仕組みなのです。

この記事では、初めて印刷所へ入稿する方が絶対に押さえておくべき 「4大基本ルール(塗り足し・トンボ・ノンブル・解像度&CMYK)」 を、難しい専門用語を使わず、図解テキストやアスキーアートを交えて徹底的にわかりやすく解説します!さらに、提出直前のミスをゼロにする 「入稿前セルフチェックリスト10項目」 も掲載していますので、ぜひ手元に置いてデータ作成に役立ててください。

【この記事のポイント(入稿データ作成の要点)】

  • 塗り足し(裁ち落とし)は「外側3mm」: 断裁時の物理的なズレで紙の白いフチが出るのを防ぐ必須の余白
  • トンボ(トリムマーク)の役割: 印刷物の仕上がり位置、断裁位置、折り位置を示すプロの目印
  • ノンブル(ページ番号)の安全配置: 端から最低5mm以上内側に配置し、見せたくない場合は「隠しノンブル」を活用
  • 画像解像度は「原寸で350dpi」&カラーは「CMYK」: Web用の72dpiでは荒れる!モニター(RGB)と印刷(CMYK)の色の違いを意識
  • 入稿前チェックリスト10項目: フォントのアウトライン化やページ数の倍数ルールなど、不備を防ぐ最終確認

初めての印刷入稿で知っておくべき「4大基本ルール」

自宅のプリンターやオフィスのコピー機で紙を出力する場合、通常は「A4」や「B5」の紙にそのまま印刷して終わりです。しかし、商業印刷や同人誌・ZINE印刷を手がける印刷所では、 「仕上がりサイズよりも一回り大きな紙に印刷し、後からまとめて四方を切り落とす(断裁する)」 という工程を踏みます。

なぜそのような工程を行うかというと、何百枚・何千枚もの紙を高速で正確に仕上げるためです。そして、その物理的なカット作業(断裁)や印刷機のインク重ね刷りの過程で、どうしても 「コンマ数ミリ単位のわずかなズレ」 が生じます。この物理的なズレをあらかじめ見越して、綺麗に本を仕上げるために用意されているのが、以下の 「4大基本ルール」 です。

基本ルール項目守るべき基準値・形式役割と目的守らないとどうなるか?
① 塗り足し(裁ち落とし) 仕上がりサイズの 外側3mm まで背景を伸ばす断裁位置が外側にズレた際の白フチ防止ページの端に白い隙間(紙の地色)が露出する
② トンボ(トリムマーク) コーナートンボ・センタートンボを配置仕上がりサイズ、断裁位置、折り位置の目印どこで切ればいいか印刷所が判断できずデータ再提出
③ ノンブル(ページ番号) 端から 5mm以上内側 に配置(または隠しノンブル)製本時のページ順序(丁合い)確認と読者の案内断裁で数字が切れる、または落丁・乱丁の原因になる
④ 解像度とCMYK カラー画像 350dpi +カラーモード CMYK 写真やイラストを鮮明に、意図通りの発色で印刷画像がギザギザに荒れる、全体の色が暗く濁ってくすむ
※ 印刷入稿で失敗しないための4大基本ルールの概要表

この4つのルールさえ正しく理解していれば、入稿データ作成の不安の9割は解消されたも同然です。それでは、それぞれの仕組みと具体的な作り方を詳しく見ていきましょう!

① 塗り足し(裁ち落とし)とは?なぜ「3mm外側」まで伸ばすのか

印刷データ作りで初心者が最も最初に引っかかる専門用語が 「塗り足し(ぬりたし)」 です。印刷所によっては 「裁ち落とし(たちおとし)」「ドリード(Bleed)」 とも呼ばれます。

結論から言うと、塗り足しとは 「ページの端(フチ)まで写真やイラスト、背景色を印刷したい場合に、仕上がりサイズよりも3mm外側まではみ出させて描いておく領域」 のことです。

断裁ズレで白いフチが出ないようにするための仕組み

なぜわざわざ3mmも外側にはみ出させて描く必要があるのでしょうか?その理由は、 「印刷所の大型断裁機(ギロチンカッター)による物理的な断裁ズレを防ぐため」 です。

印刷所では、大きな紙に何百枚ものページを重ねて一気に巨大な刃物で切り落とします。どれほど最新鋭の精密機械であっても、紙自体の伸縮や刃の圧力によって、 コンマ数ミリ〜最大1mm程度のわずかなズレ が生じることがあります。

【図解:塗り足しがある場合とない場合の断裁結果の違い】

【塗り足しがない場合(仕上がり線のサイズぴったりで作成)】
┌────────────────────────┐  ← 仕上がり線
│ 背景画像・ベタ塗り領域                 │
└────────────────────────┘
      ↓↓↓ わずか0.5mm外側に刃がズレて切られると…
┌────────────────────────┬───┐
│ 背景画像                               │白 │ ← 【印刷事故!】
│                                        │フ │    紙の白い地色が細いスジとして
│                                        │チ │    露出してしまう!
└────────────────────────┴───┘

────────────────────────────────────────────

【塗り足しがある場合(仕上がり線より3mm外側まで伸ばして作成)】
┌┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┐  ← 塗り足し線(+3mm)
┆  背景画像を3mm外側まで余分に伸ばしておく ┆
┆  ┌────────────────────────┐  ┆  ← 仕上がり線(ここで切る予定)
┆  │ 実際の仕上がりページ               │  ┆
┆  │                                    │  ┆
┆  └────────────────────────┘  ┆
└┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┄┘
      ↓↓↓ 多少外側に刃がズレて切られても…
┌────────────────────────┐
│ 背景画像がページの端まで               │ ← 【大成功!】
│ 途切れることなく綺麗に印刷される!     │    白いフチは一切出ない
└────────────────────────┘

もし仕上がり線のぴったりサイズで画像や背景色を止めてしまうと、刃がほんの少し外側にずれた瞬間に、 「インクが乗っていない真っ白な紙のフチ」 が細い線のように露出してしまいます。これは「フチなし印刷」を目指すクリエイターにとって最も避けたい印刷事故です。

あらかじめ上下左右に各3mm(計6mm)余分に背景を伸ばして描いておけば、刃が外側にずれても余分に伸ばしたインク部分が切り落とされるだけなので、 「絶対に白いフチが出ない美しい仕上がり」 が保証されるのです。

背景写真やイラストを端まで配置する時の正しいやり方

塗り足しを考慮したデータ作成を行う際は、誌面を以下の 「3つの境界線(同心円状の領域)」 として捉えるのが鉄則です。

  1. 塗り足し線(仕上がり+外側3mm): 最も外側の境界線。フチなし印刷にしたい背景写真、ベタ塗り、イラストの背景は、必ずここまで届くように拡大・配置します。
  2. 仕上がり線(本来の本のサイズ): 印刷所が断裁する目標のライン。A5本なら148×210mm、B6本なら128×182mmのラインです。
  3. 安全領域(マージン:仕上がり−内側3〜5mm): タイトル文字、セリフ、解説テキスト、人物の目や顔、ロゴなどの絶対に切れてはいけない重要要素は、仕上がり線よりも さらに3〜5mm以上内側 に収めます。

「外側にズレたとき」の対策が塗り足し(+3mm)なら、「内側にズレたとき」の対策が安全領域(-3〜5mm)です。もし仕上がり線のギリギリに文字を配置していると、刃が内側にずれた場合に文字がスパッと切り落とされてしまいます。

判型(仕上がり規格)仕上がりサイズ(横×縦)塗り足し込みデータ作成サイズ安全領域の目安(余白3mm時)
A5サイズ(ZINE定番) 148 mm × 210 mm 154 mm × 216 mm 142 mm × 204 mm 以内
B6サイズ(単行本風) 128 mm × 182 mm 134 mm × 188 mm 122 mm × 176 mm 以内
A6サイズ(文庫本風) 105 mm × 148 mm 111 mm × 154 mm 99 mm × 142 mm 以内
B5サイズ(大判・雑誌風) 182 mm × 257 mm 188 mm × 263 mm 176 mm × 251 mm 以内
スクエア(変形 148×148) 148 mm × 148 mm 154 mm × 154 mm 142 mm × 142 mm 以内
※ 主なZINE判型における仕上がりサイズと塗り足し込みデータサイズの対比表(天地左右各+3mm)

Canvaを使ってZINEをデザインしている方は、メニューバーの 「ファイル」→「表示設定」→「塗り足し領域を表示」 にチェックを入れると、破線の枠線が表示されます。背景画像をその破線の外枠いっぱいに広げ、PDFダウンロード時に 「トリムマークと塗り足し」 にチェックを入れて書き出せば、初心者でも完璧な塗り足し付きデータが作成できます。

Canvaを使った詳しいページ設定やPDFの書き出し手順については、こちらの詳細解説記事 CanvaでZINEを作ろう!初心者向けレイアウト手順とおすすめテンプレート活用法 で画像付きで解説しています。

② トンボ(トリムマーク)の役割と付け方

データ入稿のガイドラインを読むと、必ず「トンボを付けてください」あるいは「トンボなしで入稿してください」という指示を目にします。英語では トリムマーク(Crop Marks / Trim Marks) と呼ばれます。

トンボとは、印刷物の四隅や中央に配置される細い二重線や十字のマークのことです。その形状が鳥の「トンボ」や昆虫のトンボの羽の交差に似ていることから、日本の印刷業界では古くからトンボと呼ばれています。

仕上がり位置を示す「コーナートンボ」と「センタートンボ」

トンボには、大きく分けて 「コーナートンボ(角トンボ)」 「センタートンボ(中心トンボ)」 の2種類があり、それぞれ重要な役割を担っています。

【図解:コーナートンボとセンタートンボの構造】

      │     │  ← 【外側の線】塗り足し線(3mm外側)
──────┘     │
            │  ← 【内側の線】仕上がり線(ここで断裁する!)
────────────┘

┌─ コーナートンボ(左上隅)
│
▼
┼──                               ──┼──  ← センタートンボ(天地中央)
│                                     │
│         仕上がりページ領域          │
│                                     │
┼──                               ──┼──
▲
│
└─ コーナートンボ(左下隅)
  • コーナートンボ(角トンボ): 印刷物の四隅(角)に配置されます。直角に交わる二重線のうち、 「内側の線が仕上がり位置(断裁位置)」 を示し、 「外側の線が塗り足し位置(3mm外側)」 を示します。断裁機のオペレーターは、この内側の線の延長線上に刃を合わせて紙を切り落とします。
  • センタートンボ(中心トンボ): 天地(上下)および左右の中央に配置される十字(+)のマークです。印刷の中心位置を示すほか、パンフレットや中綴じ冊子の 「折り位置」 や、無線綴じ表紙の 「背表紙の中心位置」 を合わせる際の絶対的な基準線になります。
  • レジストレーションマーク(見当マーク): トンボの近くにある丸に十字が入ったマーク(◎に+)です。カラー印刷でC(シアン)・M(マゼンタ)・Y(イエロー)・K(ブラック)の4枚の刷版が寸分違わず重なっているか(版ズレが起きていないか)を作業員がルーペで確認するために使われます。

トンボが必要な場合と不要な場合(PDF入稿の場合の扱い)

かつての商業印刷では「トンボ付きのIllustrator(.ai)データ」を入稿するのが常識でしたが、近年のネット印刷通販(グラフィック、プリントパック、ラクスル、ちょ古っ都製本工房など)では、 「PDF入稿」 が圧倒的な主流になっています。

ここで初心者が最も混乱するのが、 「トンボを付けるべきなのか、付けてはいけないのか」 という点です。実は、印刷所や入稿方式によってルールが大きく2つに分かれます。

入稿パターンデータ作成サイズトンボの有無主な該当サービス・ソフト
パターンA:トンボ付き入稿 仕上がりサイズ+上下左右各10〜15mm余白 トンボ必須 (コーナートンボ・センタートンボあり)Adobe Illustrator / InDesign入稿、グラフィックのダイレクト入稿等
パターンB:サイズ指定PDF入稿 仕上がりサイズ+ 上下左右各3mm (例:A5なら154×216mm) トンボ不要 (トンボなしで塗り足しサイズで保存)ちょ古っ都製本工房、ラクスル、CanvaからのPDF入稿、多くの同人誌印刷所
※ 印刷所ごとのトンボ要否パターンの比較

【初心者が絶対に覚えておくべき注意点】:
「パターンB(トンボ不要)」を指定している印刷所にトンボ付きPDFを送ってしまうと、 「トンボのマーク自体が本誌のデザインの一部として印刷されてしまう」 または 「サイズ不一致としてデータ再提出になる」 というトラブルが発生します。必ず発注する印刷所の「データ作成ガイド」を事前に確認し、トンボの要否をチェックしてください。

各ネット印刷所の入稿ルールや最小ロット、価格帯の違いについては、こちらの比較記事 【少部数・1部からOK】ZINE印刷におすすめのネット印刷所・印刷サービス比較7選 で詳しく比較解説しています。

③ ノンブル(ページ番号)の正しい入れ方と注意点

冊子印刷において、塗り足しと並んで印刷事故が多発するのが 「ノンブル(ページ番号)」 の配置です。ノンブル(nombre)はフランス語で「数」を意味し、本や小冊子の各ページに振られるページ番号のことを指します。

「読者が読むときにページがわかればいいだけでしょ?」と思われがちですが、印刷所にとってもノンブルは 「本を正しい順番で重ね合わせる(丁合い・ちょうあい)ための命綱」 です。ノンブルがないと、印刷所側でページの前後関係が判断できず、ページが抜け落ちる「落丁(らくちょう)」や順番が狂う「乱丁(らんちょう)」の原因になってしまいます。

端に寄せすぎると切れる!内側(余白)に配置する目安

ノンブルを配置する際、初心者が最もやってしまいがちな失敗が 「ページの端(外側)にギリギリまで寄せて小さく配置してしまうこと」 です。

前述の通り、印刷後の断裁では物理的なズレが生じます。仕上がり線の端からわずか1〜2mmの位置にノンブルを置いていると、断裁刃が内側にずれたときに 「ページ番号の数字が半分切り落とされる」「『12』の『2』が消えてしまう」 といった悲惨な事故が起こります。

  • 小口(外側)・天地(上下)からの安全距離: ノンブルは、仕上がり線の端から 最低でも5mm以上、できれば8〜10mm程度内側 に配置するのが印刷業界の安全基準です。
  • 「ノド(綴じ側)」に寄せてはいけない理由: ノンブルを本の綴じ目側(ノド)に配置するのも厳禁です。特に無線綴じ(背表紙を糊で固める製本)やページ数が多い冊子の場合、本の構造上、ノド側が数ミリ奥に隠れて開きにくくなります。ノドにノンブルを寄せすぎると、手で強く押し広げないとページ番号が読めなくなってしまいます。
  • 表紙にはノンブルを印刷しないのが一般的: 表紙(表1・表2・表3・表4)にはノンブルを印字せず、本文の最初のページから数字を振るのが通常の出版ルールです。本文が目次や扉から始まる場合でも、総ページ数の中で通し番号を計算して管理します。

隠しノンブル(ノド側に入れる)を使うケース

「写真集やイラストZINEを作りたいので、写真の世界観を邪魔するページ番号を誌面に見せたくない……」
「全面写真やイラストのグラフィック重視のZINEだから、ノンブルをデザイン上入れたくない!」

そんなときにプロや同人誌作家が必ず活用するテクニックが 「隠しノンブル(かくしのんぶる)」 です。

隠しノンブルとは、 「本を綴じたときに糊や針金の中に完全に巻き込まれて見えなくなる『ノド(綴じ側)の最深部』に、極小サイズで配置するページ番号」 のことです。

【図解:隠しノンブルの配置位置と製本後の見え方】

【印刷データの段階(見開き)】
┌────────────────────────┬────────────────────────┐
│                        [5]  [6]│                        │
│                         ▲    ▲ │                        │
│                         │    │ │                        │
│                        ノドの境界線                     │
│         左ページ        (綴じ側)       右ページ       │
└────────────────────────┴────────────────────────┘
※ ノドの仕上がり線からわずか2〜3mm内側の位置に、
   5〜6pt程度の極小サイズ(薄いグレーや黒)で数字を配置しておく。

      ↓↓↓ 製本して本を糊やホッチキスで綴じると…

【完成した本の状態】
┌───────────────────────────┬───────────────────────────┐
│                                   │                           │
│  誌面にはページ番号が             │  文字や写真だけが         │
│  一切見えない美しいデザイン!     │  全面に広がる仕上がり!   │
│                                 / \                         │
└────────────────────────────────┴───────────────────────────────┘
                              【綴じ目の奥】
          (糊や針金に隠れて読者には見えないが、印刷所は確認できる!)

隠しノンブルを入れておけば、印刷・断裁・丁合いの作業現場では作業員がシートのページ番号を目視確認できるため、落丁や乱丁のトラブルを100%防ぐことができます。そして、本として完成した後は綴じ目の奥に隠れて読者の目には一切触れません。ビジュアル重視のZINEを作りたい方は、ぜひ隠しノンブルの活用を検討してみてください(※ 印刷所によっては隠しノンブルの配置位置やフォントサイズに指定があるため、事前にマニュアルを確認しましょう)。

中綴じや無線綴じといった製本仕様の違いや、ページ数の詳しい決め方については、こちらの記事 【保存版】ZINEのサイズ・ページ数・綴じ方まとめ|A5・B6・変形サイズと製本仕様の選び方 で徹底解説しています。

④ 画像解像度とカラーモードの基本(350dpi と CMYK)

データ入稿で「画面ではあんなに綺麗に見えていたのに、刷り上がった本を見たら写真がボケてギザギザになっている」「イラストの色がどんより暗く濁ってしまった」という失敗が後を絶ちません。この原因はすべて 「解像度」 「カラーモード」 の設定ミスにあります。

Web用(72dpi)と印刷用(300〜350dpi)の違い

解像度とは、画像の密度の細かさを表す数値で、単位は dpi(dots per inch:1インチ=約2.54cmの中にいくつのドットが並んでいるか) で表されます。数値が大きければ大きいほど、きめ細かく高精細な画像になります。

  • Web用画像(72〜96dpi): パソコンのモニターやスマートフォンの画面は発光体であり、72〜96dpi程度の解像度があれば人間の目には十分に美しく高精細に見えます。WebサイトやSNSからダウンロードした画像は、基本的にこの解像度です。
  • カラー印刷用画像(300〜350dpi): 一方、印刷機はインクの微細な粒子(網点)を用紙に吹き付けるため、Web用の4倍以上の密度がないと綺麗に表現できません。Web用の72dpi画像をそのまま印刷すると、ドットの粗さが露呈し、 「モザイクのようなギザギザ(ジャギー)」 「ピンボケしたような不鮮明な写真」 になってしまいます。
印刷の種類・モード必要な推奨解像度主な用途・該当データ
フルカラー印刷 300〜350 dpi カラー写真、水彩・油彩イラスト、グラデーション背景
グレースケール印刷 600 dpi 白黒写真、モノクロイラスト(グレーの濃淡があるもの)
モノクロ2階調(白黒) 1200 dpi マンガの主線(ペン画)、文字テキスト、トーン貼り原稿
※ 印刷形式ごとに求められる適正解像度の基準表

【「原寸で350dpi」の罠に注意!】
初心者が陥りやすいのが、「350dpiで撮影・保存した写真だから安心」と思い、デザインソフト上で画像を2倍・3倍に引き伸ばして配置してしまうケースです。画像をソフト上で拡大すると、解像度は反比例して半分(175dpi)や3分の1に低下してしまいます。必ず 「実際に本に印刷される実寸(原寸サイズ)の状態で350dpi以上あるか」 を確認してください。

RGBとCMYK:モニターと印刷で色がくすむ理由と対策

もう一つの重大な落とし穴が、 「カラーモード(色の表現方式)」 の違いです。パソコンやスマホの画面で見ている色と、紙の上に印刷された色は、根本的に光の仕組みが異なります。

  • RGB(赤・緑・青): 「光の三原色」。ディスプレイなどの発光体で色を表現する方式です。光を重ねるほど明るくなり、鮮やかなネオンカラーやエメラルドグリーン、蛍光ピンクなどの眩しい発色も自由に再現できます。
  • CMYK(シアン・マゼンタ・イエロー・ブラック): 「色材(インク)の三原色」。紙に当たった光の反射を目で捉える方式です。インクを混ぜるほど暗くなり(減法混色)、物理的なインクの制約があるため、RGBに比べて表現できる色の範囲(色域・カラードメイン)が圧倒的に狭くなります。

RGBで制作したイラストや写真を、CMYKで刷る印刷機にそのまま流し込むと、印刷機は「表現できない鮮やかな色」を「CMYKインクで出せる最も近い色」に強制的に置き換えてしまいます。その結果、 「エメラルドグリーンが暗い黄緑色になる」「鮮やかなピンクが沈んだ赤紫になる」 といった 色の濁り・くすみ が発生するのです。

【モニターと印刷の色のギャップを防ぐ3つの対策】:

  1. 最初からCMYKモードで制作する: IllustratorやPhotoshop、クリスタ(CLIP STUDIO PAINT)などのソフトを使用する場合は、新規作成時にカラーモードを最初から「CMYK(プロファイル:Japan Color 2001 Coatedなど)」に設定しておきます。
  2. CMYKプレビューで事前の色沈みを確認する: RGBで作業する場合でも、ソフトのプレビュー機能で「CMYKで印刷したときにどう沈むか」を事前に確認し、トーンカーブや彩度調整であらかじめ補正しておきます。
  3. 「RGB入稿対応」のオンデマンド印刷所を選ぶ: 近年の最新デジタルオンデマンド印刷機(富士フイルムのRevoria PressやHP Indigoなど)を採用している印刷所では、RGBデータを広色域トナー(特殊なピンクやグリーン)を用いてモニターに近い鮮やかさで再現してくれるサービスを提供しています。ビビッドな色味にこだわりたい方は、RGB印刷対応を謳う印刷所を選びましょう。

入稿前最終セルフチェックリスト(提出前に確認すべき10項目)

印刷所へのデータ送信ボタンを押す前に、以下の 「10項目セルフチェックリスト」 を上から順に確認してください。この10項目さえクリアしていれば、データ不備による納期遅延や印刷事故をほぼ100%防ぐことができます!

No.チェック項目確認ポイント・注意事項判定
1 塗り足し(天地左右各3mm) 背景写真やベタ塗りが仕上がり線の外側3mmまで伸びているか[ ] OK
2 安全マージン(内側3〜5mm) 重要な文字や被写体、ロゴが仕上がり線ギリギリに配置されていないか[ ] OK
3 トンボの設定 印刷所の指示に従って「トンボ付き」または「トンボなし(塗り足しサイズ)」になっているか[ ] OK
4 ノンブルの配置と順序 端から5mm以上内側に配置され、全ページの数字の並びに抜けや重複がないか[ ] OK
5 総ページ数の整合性 中綴じなら 「4の倍数」 、無線綴じなら 「2の倍数」 になっているか(白ページ含む)[ ] OK
6 画像解像度(原寸350dpi) 貼り付けた写真やイラストが原寸で300〜350dpi以上を保持しているか[ ] OK
7 カラーモード(CMYK) 印刷所指定のカラーモード(CMYK)に変換されているか(RGB不可の場合)[ ] OK
8 フォントのアウトライン化 Illustrator入稿の場合、全文字がアウトライン化されているか(PDF埋め込み確認)[ ] OK
9 リンク画像の埋め込み Illustrator入稿の場合、配置画像がすべて埋め込まれているか(リンク切れ防止)[ ] OK
10 発注サイズとデータの完全一致 注文フォームで選んだ判型(A5・B6等)と、作成したデータサイズが寸分違わず一致しているか[ ] OK
※ 入稿直前に必ずチェックしたい10項目の総点検リスト

特に見落としがちなのが 「No. 5:総ページ数の整合性」 です。中綴じ冊子は紙を二つ折りにして重ねる構造上、必ず 「4ページ単位(8p, 12p, 16p, 20p, 24p…)」 でしか製本できません。「14ページのPDF」を入稿してしまうと、印刷できずストップしてしまいます。もし端数が出る場合は、メモ帳ページや「あとがき」「奥付」を追加して4の倍数に調整しましょう。

まとめ:基本ルールさえ押さえれば入稿データ作成は怖くない!

初めての印刷入稿は、誰にとっても緊張するものです。「塗り足し」「トンボ」「ノンブル」「解像度」と聞くと最初は身構えてしまいますが、その仕組みを一つひとつ紐解いてみれば、どれも 「印刷や製本の現場であなたの作品を最高に美しく仕上げるための優しい約束事」 にすぎません。

もし自分でサイズやトンボをゼロから計算して設定するのが不安な場合は、 「発注予定の印刷所の公式サイトから、入稿用テンプレートをダウンロードして使う」 のが最も確実で安全な近道です。グラフィックやちょ古っ都製本工房などの主要な印刷所では、あらかじめ塗り足しやトンボ、安全ガイド線が完璧に設定されたテンプレート(Illustrator用、Photoshop用、Canva用、PDF用)を無料で配布しています。

画面の中で大切に育ててきたあなたの言葉や写真、イラストが、インクの香りをまとった「1冊のリアルな本」となって手元に届く感動は、何ものにも代えがたい特別な体験です。ぜひ基本ルールをマスターして、自信を持って印刷所へのデータ入稿に挑戦してみてください!

【あわせて読みたい!ZINE作りの実践完全ガイド】

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