「ZINE(ジン)やリトルプレスを作ってみたいけれど、印刷所の注文画面に出てくる用紙の種類が多すぎて何を選べばいいかわからない……」
「紙の厚さに書いてある 70kg・90kg・135kg ってどういう意味?表紙と本文の厚さはどう組み合わせるのが正解?」
初めてZINEを作る際、誰もが直面するのがこの 「紙選び(用紙・マテリアル選び)」の壁 です。パソコンやスマートフォンの画面上では同じデザインデータに見えても、実際に選ぶ紙の「手触り」「厚み(重さ)」「色味」「インクの沈み具合」によって、完成した本の印象や読書体験は劇的に変化します。
紙選びは、単なる印刷資材の選択ではありません。あなたの作品の世界観を読者の五感に届けるための、極めてクリエイティブな表現そのものです。つるつるとした光沢紙で鮮烈に見せるのか、ざらりとしたクラフト紙で温もりを伝えるのか、しっとりとした高級紙で品格を醸し出すのか――それらすべてがZINEの魅力になります。
この記事では、ZINE初心者が知っておくべき 「紙の厚さ(斤量・kg)」の基礎知識 から、ZINEで定番の用紙4選、個性を際立たせるファンシーペーパー(特殊紙)、失敗しない用途別の組み合わせ例まで、徹底的にわかりやすく解説します!
【この記事のポイント(ZINE紙選びの要点)】
- 紙の厚さ(kg・斤量)の基本: 原紙1,000枚の重さ。「数字が大きい=厚くて重い」「数字が小さい=薄くて軽い」。
- 本文用紙の鉄板: ページ数が多いなら「70kg〜73kg」、迷ったら万能の「90kg」。ページ数が少なく重厚感を出したいなら「110kg」。
- 表紙用紙の鉄板: 中綴じなら軽やかな「110kg〜135kg」、無線綴じなら耐久性とコシのある「180kg〜220kg」。
- ZINEの定番用紙4選: 文字が読みやすい「上質紙」、写真やイラストが映える「コート紙・マットコート紙」、レトロで温かい「クラフト紙」、軽快な「コミック紙」。
- 個性を出すならファンシーペーパー: 高級感あふれる「アラベール」「ヴァンヌーボ」や、透け感が美しい「トレーシングペーパー」のカバー・遊び紙活用。
- 印刷各社の無料サンプル請求: グラフィック等のペーパーカタログ・印刷見本帳を事前に取り寄せて手触りを確かめるのが最大の成功法則!
紙選びでZINEのクオリティは劇的に変わる!手触りと重みの魅力
商業出版の書籍や雑誌では、コストや流通の都合上、ある程度決まった用紙が使われるのが一般的です。しかし、個人が自由な発想で制作・出版する 「ZINE(リトルプレス)」 においては、どんな紙を選んでも完全に自由です。
※ ZINEの定義や歴史、同人誌との違いについては 【完全解説】ZINE(ジン)とは?同人誌やリトルプレスとの違い・魅力・歴史をわかりやすく解説 を、制作ステップの全体像は 【図解】ゼロから始めるZINEの作り方完全ステップ|企画から構成・入稿・製本まで をあわせてご覧ください。
なぜ、ZINE作りにおいてこれほど「紙選び」が重視されるのでしょうか?その理由は、紙が読書体験に与える 4つの物理的要素 にあります。
- 1. 手触り(テクスチャ)が感情を刺激する: 指先が触れたときの「ツルツル」「さらさら」「ザラザラ」「しっとり」「ふんわり」といった触感は、視覚以上にダイレクトに感情に訴えかけます。ノスタルジックなエッセイには温かみのあるざらっとした紙、洗練されたモード写真にはしっとりしたマット紙など、手触り自体が作品のメッセージになります。
- 2. 重みと厚み(コシ)が存在感を生む: 本を手にした瞬間の「心地よいずっしり感」や、ページをめくるときの「しなやかなコシ」は、作品に確かな信頼感とモノとしての価値を与えます。薄すぎると安っぽく見え、厚すぎると本が開かなくなるため、適切なバランスが重要です。
- 3. 白さと色味が可読性を左右する: 紙の「白」には多彩なグラデーションがあります。青みがかった純白(ハイホワイト)はフルカラー写真を鮮烈に見せますが、文字主体の本だと光を反射して目が疲れやすくなります。一方、黄色みを帯びたナチュラルホワイトや生成り色(クリーム色)は、長文テキストを長時間ストレスなく読ませる効果があります。
- 4. インクの沈み具合で発色が変化する: 表面にコーティングがある紙はインクが表面で定着して鮮やかに発色しますが、コーティングのない紙はインクが繊維に染み込み、落ち着いたマットな風合いに変化します。この「インクの沈み」をあえて計算して味わい深さを出すのもZINE作りの醍醐味です。
デジタルデータ全盛の時代だからこそ、物理的な本を手にしたときの 「物質感(マテリアル)」 が読者にとってかけがえのない価値になります。紙選びにこだわることで、あなたのZINEは単なる情報伝達ツールから、愛着を持って本棚に残したくなる「アートピース」へと昇華するのです。
初心者がまず覚えるべき「紙の厚さ(斤量・kg)」の目安
印刷所の注文画面や紙のサンプル帳を見ると、必ず 「上質紙 70kg」「コート紙 110kg」「マットポスト 180kg」 のように、用紙名の後ろに「kg」という単位が記載されています。初心者が最も戸惑うのがこの表記です。
この「kg」は、紙1枚の重さではありません。印刷業界の用語で 「斤量(きんりょう・連量)」 と呼ばれ、 「四六判(788×1091mm)という大きな原紙を1,000枚(1連)積み重ねたときの重さ」 を表しています。
仕組みはシンプルで、 「数字(kg)が大きい=紙が厚くて重い・硬い」「数字(kg)が小さい=紙が薄くて軽い・しなやか」 と理解すれば問題ありません。
身近な印刷物と四六判斤量(kg)の対応目安は以下の通りです。
| 斤量(四六判目安) | 紙の厚みのイメージ | 身近にある印刷物の例 |
|---|---|---|
| 55kg | かなり薄手 | 新聞の折り込みチラシ、辞書の本文、領収書・伝票 |
| 70kg〜73kg | やや薄手(標準的な本文) | 一般的なコピー用紙、文庫本・新書の本文、パンフレット |
| 90kg | 標準的な厚さ(万能) | 一般的な雑誌・カタログの本文、しっかりめのチラシ、ZINE本文の定番 |
| 110kg | やや厚手 | 週刊誌の表紙、会社案内パンフレット、ポスター、薄いZINEの本文 |
| 135kg | しっかりとした厚み | 映画のパンフレット表紙、中綴じZINEの表紙、ポストカード薄手 |
| 180kg | 厚手の板紙・カード | 官製ハガキ、ポストカード、無線綴じZINEの表紙定番 |
| 220kg | 極厚のカード | 名刺、しっかりしたポストカード、パッケージ箱 |
ここからは、ZINE制作における「本文用紙」と「表紙用紙」の具体的な厚さの選び方を深掘りしていきましょう。
本文用紙の目安(70kg〜90kg):めくりやすさと裏写りのバランス
ZINEの本文用紙を選ぶときの最重要ポイントは、 「めくりやすさ」と「裏写り(裏透け)」のバランス です。
- 70kg〜73kg(薄手〜標準・ページ数が多い冊子向け): 文庫本や新書と同等の厚みです。40ページ〜100ページ以上の分厚いZINEや、小説・エッセイなど文字がびっしり詰まった本に最適です。紙がしなやかなのでページが自然に開き、読者が片手でも楽に読み進められます。ただし、両面にベタ塗りの濃いイラストや写真を配置すると、裏側の絵柄がうっすら透けて見えやすい点に注意が必要です。
- 90kg(標準〜やや厚手・迷ったらこれ!万能の鉄板): ZINEクリエイターに 最も選ばれている黄金の厚さ です。16ページ〜36ページ程度の中綴じ冊子や、24ページ〜60ページ前後の無線綴じ冊子にジャストフィットします。紙に適度なコシがあり、両面フルカラー印刷でも裏写りが気になりません。文字とイラストが混ざった構成でも美しく仕上がります。「厚さに迷ったら本文は90kg」を選んでおけば、まず失敗しません。
- 110kg(厚手・ページ数が少ない薄型ZINE向け): 8ページ〜16ページ程度の薄いZINEを作る場合、70kgや90kgだとペラペラで頼りなく感じることがあります。本文に110kgを採用すると、ページ数が少なくてもしっかりとした重厚感と満足感が出ます。また、画集や写真集など1ページごとの作品性を重視する場合にも適しています。ただし、30ページ以上の冊子に110kgを使うと紙が硬すぎて本が開きにくくなるため避けましょう。
※ ZINEのページ数設計や綴じ方の選び方については、解説記事 【保存版】ZINEのサイズ・ページ数・綴じ方まとめ|A5・B6・変形サイズと製本仕様の選び方 で詳しく解説しています。
表紙用紙の目安(110kg〜180kg):しっかりとした耐久性を持たせる
表紙は、本全体の「骨格」であり「顔」です。表紙用紙を選ぶときの鉄則は、 「本文よりもワンランク〜ツーランク厚い紙を選ぶこと」 です。
- 110kg〜135kg(中綴じ冊子・カジュアルな仕上がりに): ホッチキスで留める「中綴じ製本」や、ペラっとしたマガジン風ZINEに適しています。適度なしなやかさがあり、開閉がスムーズです。バッグに放り込んでラフに読んでもらうフリーペーパー風ZINEや、16ページ以内の軽やかな作品にぴったりです。
- 180kg〜220kg(無線綴じ冊子・本格的な書籍の佇まいに): 背表紙のある「無線綴じ製本」を作るなら、表紙は 180kg(ハガキと同等) が基本のスタンダードです。背表紙の角がしっかりと立ち、書店に並ぶ単行本と変わらないプロクオリティの強度と耐久性が得られます。手で持ったときにもたわまず、コレクション性の高い仕上がりになります。
初心者にありがちな失敗として、 「本文と同じ厚さの紙(例:本文も表紙も上質90kg)で表紙を作ってしまう」 ケースがあります。表紙が本文と同じ薄さだと、本を手に取った瞬間にペラペラして頼りなく、表紙の端がめくれ上がって傷みやすくなります。必ず表紙には本文以上のコシを持たせましょう。
ZINEによく使われる定番の紙4選
印刷所には数百種類もの用紙が存在しますが、ZINE制作で実際に使われる紙の8割以上は 「定番の4つのカテゴリ」 に集約されます。それぞれの特徴、メリット・デメリット、適したジャンルを把握しておきましょう。
1. 上質紙:文字が読みやすく、筆記適性も高い万能ペーパー
「上質紙(じょうしつし)」 は、表面にコーティング剤を一切塗布していない、最もオーソドックスな非塗工紙です。コピー用紙(PPC用紙)に似ていますが、パルプ100%で作られており、キメが細かく滑らかで上質な手触りを持ちます。
- 特徴とメリット: 表面に光沢(テカリ)がなく、蛍光灯や太陽光の反射を防ぐため、 「文字が圧倒的に読みやすい」 のが最大の強みです。また、鉛筆やボールペン、万年筆での筆記適性が非常に高く、インクが滲みにくいため、読者が書き込めるダイアリーZINEやワークブック、アンケート付きZINEにも最適です。さらに、ほぼすべての印刷所で最安値の基本用紙としてラインナップされており、コストを大幅に抑えられます。
- デメリット: コーティングがないため、写真やフルカラーイラストを印刷するとインクが紙の繊維に染み込み、やや沈んだ暗めの発色になります。パキッとしたビビッドな色味を出したい場合には不向きです。
- おすすめの用途: 小説、詩集、エッセイ、インタビュー集、ZINE制作の初心者お試し版。
【プロの小ワザ:色上質紙の活用】
上質紙の原料にあらかじめ染料を混ぜて抄いた 「色上質紙(いろじょうしつし)」 も大人気です。「さくら(淡いピンク)」「浅黄(淡い水色)」「うぐいす(淡い黄緑)」「アイボリー」など30色以上のカラーバリエーションがあります。表紙に色上質紙の特厚口(約110kg〜135kg)を使い、モノクロ1色でタイトルを印刷するだけで、デザインソフトで色面を作らなくても一瞬でおしゃれなバイカラーZINEが完成します。
2. コート紙・マットコート紙:写真やフルカラーイラストを鮮やかに見せる
紙の表面に白色の顔料(クレーなど)をコーティングした用紙を 「塗工紙(とこうし)」 と呼びます。その代表格が「コート紙」と「マットコート紙」です。
- コート紙(グロス系): 表面に強い光沢があり、つるつるとした滑らかな肌触りです。インクが紙の表面にとどまるため、彩度とコントラストが極めて高く、黒がしっかりと締まります。商業雑誌のグラビアページ、映画のチラシ、飲食店のメニュー表のような「パキッとした鮮やかさ」を求める場合に最適です。反面、光が反射して長文の文字は読みにくく、鉛筆での書き込みはできません。
- マットコート紙(半光沢・ダル系): コート紙の表面の艶をあえて抑えた、しっとりとした落ち着きのある用紙です。光の反射が少ないため文字が読みやすく、なおかつカラー印刷の発色も非常に優れています。印刷されたインク部分だけ適度な艶が出て、地色のマット感との対比で 「上品で洗練された高級感」 が漂います。ZINEクリエイターの間では、写真集・イラスト集の用紙として 圧倒的一番人気 を誇ります。
| 比較項目 | 上質紙 | コート紙 | マットコート紙 |
|---|---|---|---|
| 表面の光沢 | なし(マット・自然) | 強い光沢(ツルツル) | 控えめな艶(しっとり) |
| カラー発色 | 沈みやすく落ち着いた色 | 極めて鮮やか・高コントラスト | 上品で鮮やか・階調豊か |
| 文字の読みやすさ | ◎(光反射ゼロ) | △(光が反射しやすい) | ◯(反射が少なく良好) |
| 筆記適性 | ◎(鉛筆・ペンOK) | ×(油性ペン以外弾く) | △(鉛筆は乗りづらい) |
| コスト感 | 最も安価 | 安価(標準的) | 安価(標準的) |
| ZINE適性 | テキスト・小説・詩集 | 鮮烈なアート写真・ビジュアル | 写真集・イラスト集の鉄板 |
3. クラフト紙(未晒クラフト):素朴で温かみのあるレトロな風合い
「クラフト紙」 は、木材パルプをあえて漂白せずに作る、温かみのある茶色い未晒(みざらし)用紙です。段ボールや封筒、コーヒー豆のパッケージなどでおなじみの素材です。
- 特徴と魅力: クラフト紙を1枚使うだけで、 「オーガニック」「インディーズ」「ハンドメイド」「ヴィンテージ」 といった独特のカルチャー感が本全体に宿ります。特に表紙にやや厚手のクラフト紙(四六判108kg〜129.5kg前後)を採用するスタイルは、ZINE界隈で不動の人気を誇ります。手触りはざらりとして素朴で、使い込むほどに手に馴染む経年変化も楽しめます。
- 印刷時の注意点とコツ: 紙自体が茶色いため、カラー印刷をするとインクの色と紙の色が混ざり合い、全体的に暗く沈んだトーンになります。特に「白」のデータ部分は印刷されず紙の茶色がそのまま出ます。そのため、クラフト紙を使う際は 「黒1色の線画やタイポグラフィ」 でシンプルに引き締めるか、 「白トナー(ホワイトインク)」 を使ったチョークアート風の印刷を組み合わせると抜群にかっこよく仕上がります。
※ クラフト紙や更紙を活かしたレトロなリソグラフ印刷に挑戦したい方は、解説記事 レトロ印刷JAMでZINEを刷ろう!リソグラフ印刷の魅力と独特な風合いの出し方 もあわせてチェックしてみてください。
4. コミック紙・マガジンペーパー:週刊誌のような軽やかさとザラつき
「コミック紙」や「更紙(ざら紙・マガジンペーパー)」 は、週刊少年漫画誌や新聞の本文で使われるような、再生パルプを含む素朴な用紙です。ほんのりグレーがかった白や、ピンク・グリーン・クリームなどの色更紙(色コミック紙)もあります。
- 特徴と魅力: 繊維の密度が粗く作られている「かさ高紙」のため、 「厚みがあるのに驚くほど軽い」 のが大きなメリットです。指先に引っかかるようなざらっとした感触と、ページをめくるときの「カサッ」という乾いた音が、どこか懐かしい読書体験を生み出します。
- おすすめの用途: マンガZINE、イラスト短編集、サブカルチャー系の批評誌、ストリートカルチャーZINE、1枚の紙から作る折本。
あえてチープで軽やかな質感を選ぶことで、「完成されすぎないDIY感・インディーズ感」を強調できるのがコミック紙の最大の魅力です。
個性を出したいときの「ファンシーペーパー」おすすめ
「普通の紙では物足りない」「本を手にした瞬間に『おっ!』と驚かれるような特別な装丁にしたい!」という方におすすめなのが、 「ファンシーペーパー(ファインペーパー・特殊紙)」 です。
ファンシーペーパーとは、紙の原料や製造方法に工夫を凝らし、独自の風合い、凹凸、手触り、色合いを持たせた高付加価値な用紙の総称です。ここでは、ZINE制作で特に評価の高い銘柄と、初心者でも挑戦できる装丁テクニックを紹介します。
アラベール・ヴァンヌーボ・OKモンテシオンなど風合い豊かな高級紙
- アラベール(ARABELLE): 繊細な画用紙のような優しい凹凸感と、しっとりとした柔らかい手触りを持つ非塗工ファインペーパーの王道です。印刷されたインクが紙に柔らかく沈み、絵画や水彩画のような優美で落ち着いたトーンを表現できます。詩集、短歌集、静物写真集、イラストZINEの表紙・本文として絶大な支持を集めています。ホワイト、ナチュラル、スノーホワイトなどの色展開があります。
- ヴァンヌーボ(VENT NOUVEAU): 「紙本来の豊かな風合い・ラフな質感」と「印刷部分の鮮やかなグロス発色」という、相反する要素を高次元で融合させた最高峰のハイブリッドペーパーです。インクが乗った絵柄部分だけ上品な艶を放ち、地色のマットな手触りと美しいコントラストを描きます。美術展の公式図録やハイエンドな写真集に採用される紙で、ここ一番の勝負ZINEの表紙にぴったりです。
- OKモンテシオン / OKモンテルキア: 嵩高(かさだか)でふんわりと空気をはらんだような軽やかさを持つファインペーパーです。ざっくりとしたラフな手触りと、アンティークな洋書のようなクラシックな佇まいが魅力です。厚みがあっても非常に軽いため、60ページを超える長編ZINEでも重くならず、めくり心地も抜群です。
ファンシーペーパーは上質紙やコート紙に比べて原紙代がやや高価ですが、ZINEのような少部数(10部〜50部)であれば、全体の印刷費用に対する差額は数百円〜数千円程度に収まることも珍しくありません。表紙だけでもファンシーペーパーを採用すると、作品のクオリティが商業出版並みに跳ね上がります。
トレーシングペーパー(透ける紙)を表紙カバーや遊び紙に使う裏ワザ
ZINE作家の間で大人気のおしゃれな演出テクニックが、半透明の 「トレーシングペーパー」 の活用です。向こう側がうっすらと透けて見える性質を活かして、以下のような装丁ギミックが楽しめます。
- テクニック1:透けるブックカバー(帯・ジャケット): 本の表紙の外側に、トレーシングペーパーで作ったブックカバーを巻きます。下の表紙に描かれたイラストや写真が曇りガラス越しのようにうっすら透け、本全体に神秘的で洗練された高級感が生まれます。ネット印刷所でもオプション加工として注文できるほか、市販のトレーシングペーパーを自分でカットして巻くセルフ加工も簡単です。
- テクニック2:扉の前の「遊び紙(あそびがみ)」に挟む: 表紙をめくった直後の最初の1ページ(本編が始まる前の遊び紙)にトレーシングペーパーを1枚挟み込みます。本を開いた瞬間に「シャリッ」という繊細な紙音が鳴り、次のページへの期待感を劇的に高めることができます。
- テクニック3:重ね合わせデザインの仕掛け: トレーシングペーパー側にタイトル文字や英字ロゴだけを印刷し、下の表紙には背景イラストだけを印刷しておきます。重ねることで1枚のグラフィックとして完成し、カバーをめくるとイラストだけが現れるという、インタラクティブなギミックが作れます。
用途・ジャンル別!失敗しない紙の組み合わせ例
「表紙と本文、具体的にどの紙を組み合わせればいいの?」という疑問に応えるため、ZINEの主要ジャンルごとに 失敗しない鉄板の組み合わせレシピ をまとめました。
テキスト・エッセイ系ZINEの鉄板構成
小説、旅エッセイ、日記、インタビュー集など、 「文章をじっくり読ませたいZINE」 のベスト構成です。
- 表紙: クラフト紙 129.5kg または マットポスト 180kg(マットPP加工)
- 本文: 上質紙 70kg〜90kg または 淡クリーム琥珀(書籍用紙)72.5kg
- 製本仕様: 無線綴じ(背表紙あり)または 中綴じ
- この組み合わせの狙い: 本文にクリームがかった淡クリーム琥珀や上質紙を選ぶことで、光の反射を抑え、読者の目が疲れにくくなります。表紙にマットPP加工やクラフト紙を合わせることで、カフェや移動中の電車で片手持ちしても表紙がへたらないしっかりしたホールド感が生まれます。
アート・写真系ZINEの鉄板構成
イラスト集、写真集、グラフィック作品集など、 「ビジュアルの美しさを主役にしたいZINE」 のベスト構成です。
- 表紙: マットコート 180kg〜220kg(マットPP加工)または ヴァンヌーボV 175kg
- 本文: マットコート 90kg〜110kg または アラベール 90kg〜110kg
- 製本仕様: 中綴じ(見開き写真がフラットに開く)または 無線綴じ
- この組み合わせの狙い: マットコート紙を採用することで、鮮やかな色彩の再現性を確保しながら、表面のぎらつきを抑えた上品なアートトーンに仕上げます。表紙にマットPP加工を施すことで、写真集で最も気になる「読者の指紋や摩擦キズ」を完全にブロックできるのも大きなメリットです。
【コミック・サブカル系ZINEの構成例】
マンガや同人誌、ストリート系ZINEなら、表紙に「色上質紙 最厚口(またはクラフト紙)」、本文に「コミック紙 70kg(または上質紙 70kg)」の組み合わせが王道です。軽快で手に取りやすく、どこか懐かしい週刊誌のような親しみやすさが演出できます。
※ 各印刷所ごとの特徴や少部数での印刷コスト比較は、こちらの記事 【少部数・1部からOK】ZINE印刷におすすめのネット印刷所・印刷サービス比較7選 を参考にしてください。
まとめ:実際に紙見本を取り寄せて手触りを確かめてみよう
紙選びにおいて、最も大切なルールがあります。それは、 「画面上だけで紙を決めず、必ず自分の手で実物を触って確かめること」 です。
モニターに映る「上質紙 90kg」という文字や画像からは、その紙が持つ本当の硬さ、指先に伝わる質感、光に透かしたときの透過度、ページをめくるときの音は絶対に伝わりません。同じ90kgでも、上質紙とマットコート紙とクラフト紙では、手にしたときのコシや厚みの印象が驚くほど異なります。
幸いなことに、多くのネット印刷会社では、クリエイター向けに 「無料のペーパーサンプル帳・印刷見本BOOK」 を配布しています。
- Graphic(グラフィック): 国内屈指の充実度を誇る『ペーパーカタログ』や『印刷サンプルBOOK』を会員登録で無料請求できます。主要な上質紙・コート紙・ファンシーペーパーが網羅されており、厚さの違いやCMYKカラーチャートの印刷結果が手元で一目瞭然です。ZINE制作者なら絶対に手元に置いておくべきバイブルです。
- バンフー(Vanfu)やプリントパック: 各種加工オプション(PP加工、箔押しなど)を含めた無料サンプルセットが請求可能です。
- レトロ印刷JAM: リソグラフ特有のインク色見本帳や、富士わら紙・クラフト紙・ザラ紙などの個性派ペーパーサンプルを販売しています。
まずは印刷所の無料サンプルを取り寄せてみてください。サンプル帳をパラパラとめくりながら、「このしっとりした紙にあの写真を載せよう」「表紙にはこの厚いクラフト紙を使おう」と構想を練る時間こそ、ZINE作りで最もエキサイティングで楽しい瞬間です。
あなたの作品の魅力とメッセージを最大限に引き出してくれる、運命の1枚を見つけてくださいね!
【あわせて読みたい!ZINE作りの実践完全ガイド】
- 印刷所選びの決定版:
【少部数・1部からOK】ZINE印刷におすすめのネット印刷所・印刷サービス比較7選 - サイズ・ページ数・綴じ方の選び方:
【保存版】ZINEのサイズ・ページ数・綴じ方まとめ|A5・B6・変形サイズと製本仕様の選び方 - リソグラフ特有の風合いを楽しむ:
レトロ印刷JAMでZINEを刷ろう!リソグラフ印刷の魅力と独特な風合いの出し方 - 印刷所へのデータ入稿ルール:
入稿データ作成の基礎知識|ノンブル・トンボ・塗り足し・解像度をわかりやすく解説 - ゼロから始める作り方完全ステップ:
【図解】ゼロから始めるZINEの作り方完全ステップ|企画から構成・入稿・製本まで - 制作費用相場・原価シミュレーション:
ZINE制作にかかる費用・相場はいくら?10部〜100部の原価計算と予算シミュレーション

コメント